...ing logging 4.0

はてなブログに移行しました。D言語の話とかいろいろ。

それは研究と開発と教育の違い

途中まで書いたファイルをデスクトップにほったらかしにしてあったので,デスクトップを整理するついでに適当に書きたして公開することにした.

本題

いやー,はまってるねー.

では,工業高校情報電子工学科を卒業して,大学工芸学部電子情報工学科を卒業して,修士課程電子情報工学専攻を修了したおいらが,君の周りで何が起こっているのかを説明しよう!

某国立大学工学部所属の21歳。電気系の学科に所属。


父親が某大手電機企業の保守、整備を担当する人間だったもんで
現場を知らない人間が作った製品の欠陥に関する話や、
それをなんとか解決した武勇伝を子守歌のように聞いて育ってきた。


父曰く、「工学部出身のやつはダメだ。パートのおばちゃんの方がよっぽど使える。」と。
(ちなみに父は工業高校卒。)


大学に入るまではそんなのあり得ないだろうと思っていたが、年を重ね、研究室に入ってその言葉を少し実感している。
事例をいくつか挙げてみる。


・シミュレーションばかりする教授。実際の製作はどうするか聞いたら、学会誌に載せると誰かが追実験してくれるからしなくていいそうな。
・院生が作った学生実験用電源が使い出してから3回ですべて故障。調べてみたらコンデンサの選定が非常にまずい。半田付けも芋半田だらけで非常に汚い。
・パソコンのメモリとHDDの区別が付かない先輩。2週間ほど前にいい年して今さらだけど知らないと恥ずかしいのでって質問された。
オシロスコープが使えない同期。

工学部での違和感

まず,大学は研究するところで,研究は開発ではないということ.
どうやら君が求めているものは開発であって,研究ではないみたいだ.
開発はたとえ表面上の問題を解決するだけであってもとにかく便利なものを作れば十分だけど,研究は根本的な問題を解決することが必要.
そんな研究にとって,技術とは,思いついた新しいアイデアの良さを証明するための手段だ.
研究は新規性がないといけないから,この証明ができるだけ短い時間でできることが望ましい.
だから,実際に物を作れるならそれに越したことはないけど,理論だけで正当性が担保できるなら,それで十分だよね.
その教授がシミュレーションばかりするのは,そのテーマの他にもたくさんのテーマを抱えていて時間的余裕がないから,実際にわざわざ作って証明してみせるなんて悠長なことはやっていられないんだろう.
そもそも,シミュレーションってのは,実際に作らなくても必要な結果を得るための道具なんじゃなかった?
そこからでも,君が求めているものを,彼らは求めていなくて,しかもそれが正当な理由からであることがわかるんじゃないかな.


電気系の学科なのに同期がオシロが使えないとは嘆かわしい.
主記憶とHDDの区別が付かない先輩は向上心があってよろしいかと思います.ははは.
ただ,君の苦手な理論の世界を得意とする人もいるわけで,時間配分の違いだけかもしれないし,実装力を必要とする研究をするつもりが最初からないのかもしれない.

シミュレーションなんかはわりと喜んでやるのに、特性測定なんかは時間がかかるのでみんないやがる。
それならと計測を楽にするために、データロガーを作ったら周囲は完全に変人扱い。
回路設計とかプログラミングとか授業でやったことの応用なのに。
あと、データロガーの件では教授に怒られた。一人だけ手を抜くなと。

うわあ,素晴らしい.今どきそういうことできる学生はほとんどいない.
企業がいつまで経っても「技術者が全然足りない」と言うのは,そういうことができる学生がいない,ということなのだから.


それなのに,大学生にもなっている大人に対してその怒り方はまずい.
ちゃんと理由を説明するべき.
この話で大事なのは,教授が思っている「手を抜いたところ」と,君が思っている「手を抜いたところ」が違うということ.
これは開発でも研究でもなくて,教育なんだ.
だから,与えられた情報だけで問題を解くことを求められているんだ.
「もっと便利な道具あるから」といって他の方法を採られたんじゃ,学んで欲しいことが学んでもらえない.


そして,君のように,その学んで欲しいことをもう既に学び終わってしまっている場合に,教育は懐の広さを試される.
情報系の話になるけど,「今どきリストなんて自作してられるかよstd:list使えばいいだろjk」なーんて思っても,教員には君が本当にその技術を持っているのかわからない.


ちなみに,僕が受講したプログラミングの授業では,最初に,やけにめんどくさい課題が出されて,それをクリアできたらもう授業には出なくてよいことになっていた.
ま,その課題の難易度がやけに高くて,制限時間内には解けなかったから(´・ω・`)して渋々全部受講したけどね.
結局最後まで受講してもそこまでのレベルには到達できそうになかったけどな!
あれはうまくやられた><;


話を戻すけど,とにかく君がやったことは,開発の世界なら素晴らしいこと.
だけど,やっぱり研究と開発の違いと同じで,目の前の課題をクリアしているだけで,根本的な課題がクリアできていない.
今は特性測定の結果を得るのが目的なんじゃなくて,特性測定をすることが課題なんじゃないの?


それでも全く学ぶことがなくて,時間の無駄だと思うなら,できることを証明してみせて納得させるしかない.
ここは腕の見せ所だ.
一人だけ依怙贔屓してるという苦情もありうるから,「あいつならしょうがない」とクラスメイトに言われるくらい見せつけてやればいい.

で、こんな奴らが松下とか日立とかの内定をとっている。
メモリとHDDの区別が付かなかった先輩は東芝へ行くそうな。よーしNAND型メモリ作っちゃうぞ??ってオイ。プロセス方面行くみたいだから意外と大丈夫かもしれないけど。
どういう部署に行きたいか聞いてみると、そろいも揃って「研究開発」。
生産現場へは行きたくないらしい。
というか生産現場へは国立大卒者が行くところじゃないという選民意識みたいなのを持っている人すらいる。


まとめると、


・工学部内で手を動かすことをいやがる風潮がある。
生産現場を低く見ている人がらいる
・そういう人たちが大手へ就職している


こういうことが大学で感じた違和感。父親の影響で、周りの人間を色眼鏡で見ている面は否定できないが。
「工学」部なのに手を動かしてもの作らないのかよと。
他の大学でもこんな感じなのだろうか。

企業だってもっとできる人を求めているよ.
でも,先にも書いたけど,理論もできて,ものづくりもできる人はそうそういない.
たいていの人は,どちらかをやるだけで精一杯なんだ.
ほら,君がそうであるように.


でもそんなに悲観することはない.
君は,彼らにできることが自分にはできないと嘆いている.
なのに,彼らは君にできることが自分にできる必要なんてないと思っている.
この差はとても大きいんじゃないかな.
君は自分の無限の伸びしろに気が付いているのだから.

元増田です。
想像以上の反響にびっくり。


少し補足をすると、データロガーの件は、
研究室に入り立ての俺らが研究室で使う測定器になれるための実験の妨げになるからよくないって言うのと
教授には僕の作ったデータロガーの精度が甘い(マイコンのAD変換を使っているので。)ってことを突っ込まれた。


民間出身の助教授(父と同じ会社でびっくり。部門は違う。もちろん父のことは話していない。)
からはこっそり「君はおもしろいことをするね。」といってもらえたけど。


このエントリーを書いたのは同期のオシロスコープ君と将来の話をして疑問に思ったのがきっかけ。
ブクマコメなんかでもオシロ君と似たような意見の人が結構いてウチだけじゃないんだと思った。


どんな話をしてたかって言うと、


オシロ君曰く、
「俺らの大学からメーカーへ行くのはたいてい研究開発。研究所で半田ごて握らないだろ。」
「まあ、おまえの成績じゃ推薦取れないからどっちみち関係ないかw」
「絶対大手。中小企業や現場なんて俺らみたいなの行くところじゃないから。そういうのは工業高校や高専のやつにやらせればいいんだよ。」

"http://anond.hatelabo.jp/20080709235549"

これはひどい
やれないのと,やらないのは全然違う.
それじゃあ仕事の質が判断できないんじゃないか?


関係ないけど,日本の上流設計と下流設計の関係に近い問題なのかなあ.
いや,上とか下とか,そんな言葉を使うからオシロ君みたいなのが勘違いしてしまうのだ(って,んなこたーないか).
抽象設計と具象設計と呼ぶべきだよね.

悔しかったのでいくつか反論したけどオシロ君は俺より成績がいいので何を言っても負け惜しみっぽく聞こえる。


俺も手を動かすのが好きな、今風に言えばギークっぽい人たちが今の大手を作ったことを伝えたくて
「大手も昔は中小だよ。ホンダとかソニーとか。」
といったら少し感心された。でもすぐに「それだけじゃん。それにおまえがそんなのになれるわけ無いだろ。」
アメリカの企業で具体例を出せば良かったのかな。アップルとかマイクロソフトとか。


俺とオシロ君がどんな人間か比較すると、


オシロ君:理論に強い。固体物性は同期でトップクラスの出来。実技ダメ。成績は俺より上。俺は彼に頭が上がらない。
俺:実技強い。理論(特に数学とか物性とか)がダメ。数学なんて微分方程式解けたら充分じゃんってタイプ。連続性の証明?そんなの理学部のやつがやればいいだろって人間。
って感じ。


余談だが、そんな俺とオシロ君がペアを組んで教授から与えられたシミュレーションの課題をやることになった時の話。


俺は、理論がさっぱりなので、近似式の算出なんかはオシロ君にほとんどやってもらった。
一方、オシロ君はUNIXやプログラミングはさっぱりなんで実装は大半が俺。


なんだかんだで、研究室の中の同期3組中一番早くできあがった。
この組み合わせが、オシロ君タイプ二人だったり、俺みたいなタイプ二人だったら、きっと課題をこなすのはもっと困難だったと思う。
学部の研究室でのわずかな経験で言うのも何だが、開発現場には多様な人間が必要なんだと思う。
だけど実際には理論家の方が立場が上。理論と実践は車の車輪の両輪のようなものだと思うから立場が対等じゃないと車はまっすぐ進まない。
だから俺は理論に強くなってオシロ君を見返したい。少なくとも同等の立場になりたい。院試の点数で勝ったら少しは見直してくれんのかな。
でもむりっぽいな。はあ。


院試はどうだったかな?
もう卒研まっただ中だと思うけど,オシロ君は今頃苦労しているだろうか?





結局,オレタチはさあ.


研究とか開発とか学習とか,そんなこと関係なくて.


ものづくりがしたいんだよ!!

おわり

何か出来が気になる部分もあるけど,めんどくさいからいいや!